今年の百合を振り返る 2023

この記事は対偶TUT Advent Calendar 2023の14日目の記事です。

はじめに

みなさんごきげんよう、3系M1のSessです。

昨日の記事はDDliaさんによる音楽系サークルにKubernetesを導入するでした。いつもテクノ部の技術面を支えてくださり本当にありがとうございます。私も3系のはずですがサーバーの設定ってこうやるんだスゲーという感じで読んでいました。ネットワークに強い男はかっこいいです。

さて、私は百合というジャンルのオタクをしているものになります。好きな百合は人外百合(容姿よりも寿命の違いに重きを置くタイプ)、専攻ジャンルは百合SFです。対戦よろしくお願いします。

ということで、今年も年の瀬が近づいてくる頃となりましたので、この記事では私視点での今年の百合シーンの振り返りをします。対偶なので技科大にこじつけることもしません

まず初めに、私の周り*1では「やがて君になる」が局所流行していたことが印象的な出来事でした。やはり何年たっても色褪せないエポックメイキング的な作品であることを再認識するような出来事でした。まだ読んでいないという方はぜひ読んでいただきたいです。全8巻で人生が変わります。ぜひ「佐伯沙弥香について」も読んで

今年の所感

身内の話はこれくらいにして、さっそく振り返りをしましょう...と行きたいところですが、先にここで扱う百合を定義しておきます。無用な戦争に発展しかねないので

女性同士に巨大感情が存在する関係を百合と定義し、そのような関係性が登場する作品をこの記事で扱うこととします。以下、そのようなスタンスでお願いします。 また、紹介する小説はAmazonリンク、漫画は可能な限り試し読みのリンクとなっています。アフィリエイトではないので安心して踏んでください

まず1月に「ささこい」のアニメ化が発表されました。今年最初の𝑩𝑰𝑮 𝑵𝑬𝑾𝑺でした。来年4月からの放映がとても楽しみです。

そして、2月には河出書房より「百合小説コレクション wiz」が発売されました、また零合社より百合総合文芸誌「零合」が創刊されるなど百合文芸シーンが盛り上がりを見せました。

河出書房は夏に吉屋信子先生の作品を文庫で復刊させるなど今年の百合小説シーンではかなり目立った出版社でした。

復刊といえば星海社瑞智士記先生の「幽霊列車とこんぺい糖」(木ノ歌詠名義)と「あまがみエメンタール」の、早川書房が宮澤伊織先生の「ウは宇宙ヤバいのウ!」のそれぞれ新版を出すなど、過去の名作の復刊が多い年だったと思います。特に「ウは宇宙ヤバいのウ!」は宮澤先生が新版の出版にあたって「百合にしたかったので主人公を女性にした。」と大幅な改稿が加えられており、旧版の出た2013年と比べると百合というジャンルが大きくなっていることを実感できるものでした。

アニメの方では「転生王女と天才令嬢の魔法革命」、「私の百合はお仕事です!」、「私の推しは悪役令嬢。」などガールズラブに分類されるような百合作品が増えてきたなという印象を受けた年でした。

来年は冒頭に紹介した、「ささやくように恋を唄う」、何者かになりたい少女たちの青春を描くオリジナルアニメーション「夜のクラゲは泳げない」など期待を寄せている作品が目白押しで大変ワクワクしております。

youtu.be

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今年の所感はこれくらいにして、ここからは今年発売の小説/漫画でよかったものを紹介します。

作品紹介

以下、作品の楽しみを損なわない程度のネタバレを含みます。

ご主人様には吸わせません!

storia.takeshobo.co.jp

吸血鬼百合に外れ無し 「古今百合大全」民明書房刊, 1957年

古来より吸血鬼と百合は最高の組み合わせとされています。吸血鬼百合に外れ無しとはよく言ったものです。パデラポッロのりお先生の「ご主人様には吸わせません!」はそんな最高の漫画となっております。さて、こちらの作品ですが、

 \displaystyle
\mathrm{小型犬系メイド} \times \mathrm{長身美形吸血鬼}

の交流を描いた作品となっております。おっきな女の子に仕えるちっちゃい女の子、これも最高ですね。

あらすじ:
幽霊が出ると噂の屋敷にメイドとして住み込みで働くことにしたマチルダは、屋敷の女主人オーガストに迎えられる。オーガストの整った顔立ちに早速惹かれてしまうマチルダだが、屋敷で過ごす初めての夜、正気を失ったオーガストに食べられてしまう(物理)。一転、オーガストに対して恐怖を覚えてしまうマチルダだったが、自分が安心して働くために彼女を人間に戻す決心をする。

この作品の推しポイントとしては、追い詰められてオーガストの為にめちゃくちゃ頑張るマチルダです。オーガストは大きいけど実は臆病な女の子です。いろいろあって彼女は自室に閉じこもってしまうのですが、マチルダは何としてでも彼女を部屋から出すために窓から強行突入をします。

ああ、窓を割る百合っていいな。

どんな手を使ってもオーガストに心を開いてもらおうとするマチルダの今後のアプローチから目が離せません。

伽藍の姫

ichijin-plus.com

続いて紹介するのは百合SF漫画の名手、こるせ先生の「伽藍の姫」、一言で表すと、


ポストアポカリプス \times ロボット \times 百合

といった作品で、人間のイサナと機械人のヒメの冒険譚です。

先に定義したように、百合は女性同士の巨大感情を扱った作品です。しかしこの作品、ヒメは記憶を失っており、感情にも乏しいです。そんな彼女がイサナに手を引かれ旅をする中で信頼や絆を築いきます。感情の獲得からその成長までを描写しているのがロボット \times人間の面白いところだと思います。

繊細な筆致で描かれる背景にも注目です、あとヒメのきょとん顔がすごくかわいい

単行本1巻は12/18に発売です。異種間バディ百合が好きな方は是非手に取ってみてください。

ツインスター・サイクロン・ランナウェイ

comicbushi-web.com

こちらは小川一水先生の宇宙漁船百合SF「ツインスター・サイクロン・ランナウェイ」のコミカライズになります、漫画担当はたなかあひる先生。7月にコミックブシロードWebにて連載が始まりました。

巨大ガス惑星に存在する魚状の生き物"昏魚(ベッシュ)"を二人一組の漁船で獲りに行く話で、漁船には男女で乗るのが習わしとなっている世界に抗おうとする少女たちの物語です。

原作小説の奇妙奇天烈な宇宙での漁が忠実にビジュアル化されており、漫画家さんってすごいんだなと思いました。(小学生並の感想) 小説で大型犬みたいだなという印象だったテラさんのほわふわ感が本当にイメージ通りなんですよ、このコミカライズ。あとやっぱり

デカイ女と小さい女の百合好き

これに尽きます。

回樹

この本は3月に出た斜線堂有紀先生のSF短編集になります。その中でも表題作である「回樹」はSFマガジン2021年2月号の百合特集2021を初出とする作品です。

同棲していた恋人をなくした女と死体を吸収する謎の巨大物体「回樹」を巡る話で、恋人の遺体をどうするかという広義の「死体を埋める百合」です。倦怠期に入ったカップルのドロドロした重い感情がたくさん出てきます。斜線堂先生の書く仄暗い百合大好きなんですよね...

そして、本書書き下ろしである短編「回祭」。回樹のその後を描くこの作品はヒステリックな女主人とその使用人の話となっています。個人的に殺伐百合オブザイヤーを送るならこの作品でしょう。

この2編は相手の死によって、取り残された女の視点で進みます。死というのは2人を分かち、感情が一方通行にしてしまうものです。回樹はそんな向ける先を失った愛情や憎悪を増幅し自分に向けさせる性質があり、相手が死してもなお、死んだからこその巨大感情が描かれていて面白かったです。

あと完全に余談ですが、「百合小説コレクション wiz」で斜線堂先生が2022年熱い百合作品に挙げていた「【百合体験】しまこい。〜 姉妹で恋するヒミツの時間 〜」は本当にいい音声作品なのでぜひ聞いてみてください。

www.dlsite.com

あーしとわたし。 ギャル × 百合アンソロジー

ここまでSFが3作続きましたが、次は打って変わってギャル \times百合のアンソロジー「あーしとわたし。」を紹介します。KADOKAWAで百合と言えば電撃NEXTという感じでしたが、こちらはコミックニュータイプ編集部が今年から発刊しているシリーズの1冊目となります。むっしゅ先生がイラストを寄稿、きぃやん先生や雪子先生、みかん氏先生といった豪華執筆陣のアンソロです。

ギャルといえば陽キャの象徴、我々陰キャの手を引いて明るい世界を見せてくれる女の子のことです(幻覚)。 これはそんな陽ギャル \times陰女子をテーマとしたアンソロジーです。

ギャルの百合って何がすごいって、〇〇ってよく見ると可愛いよね、メイクしてあげるよができるんですよ。まだ付き合ってもないのに、顔近づけて相手を可愛くするってとんでもないことしてると思いませんか?尊すぎる...

そして、なんといっても遊んでるように見えて彼女一途なギャップですよ。いろんな女の子と遊んで彼女に嫉妬されるもよし、バイトのし過ぎで彼女に構えず寂しさに狂われるもよし。そして、そんな負の感情を爆発させた彼女にまっすぐ向き合うギャル...眩しいな、これが陽キャの力か。 このアンソロで一番のお気に入りは、そんなすれ違いを描いたおーうち先生の「辛口な君が好き」です。

ギャルの良さを再認識させられたアンソロでした!

わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ!(ムリじゃなかった?!)

今年2月に待望の新刊、5巻が発売され第2部が幕を開けたみかみてれん先生による絶好調ガールズラブコメディー!11月に6巻も発売しております。

主人公の元陰キャ女子、甘織れな子が最高の高校生活を手に入れるために学園のスパダリ、王塚真唯を幸せにしようとする話です。王塚真唯もこれでもかとれな子を幸せにしようとしてきます。

王塚真唯に人生を狂わされた女代表の琴紗月、れな子のことが気になってる学園の大天使、瀬名紫陽花、ちょっと腹黒いみんなの妹小柳果穂といった個性的なメンバーと一緒にれな子は最高の青春をつかみ取ることができるのか?!

コミカライズもあるよ、最新刊が20日に出るよ!

ynjn.jp

さて、2部の内容に深く触れようとすると1部のネタバレになり死刑又は無期若しくは5年以上の懲役*2に処されかねないので。5巻はあじれな、6巻はまいれなが尊かったとだけ言及しておきます。れな子の過去と決着がつく7巻も楽しみに待っております。

おわりに

ここまで読んで頂きありがとうございます。紹介したい作品はもう2, 3ありましたがSF過多となってしまうため見送りました。それでも3作品あるな...ここで紹介した作品に触れてくれる方がいたらとてもうれしいです。

明日はのりたまさんによる「Thunderboltとマジカルミライ2023の感想を少しだけ」です。オタクの感想記事を読むのが大好きなのでとても楽しみにしています。お楽しみに!

*1:テクノ部界隈

*2: 刑法199条