今年触れた百合について 2022

この記事はTUT Advent Calendar 2022の18日目の記事です。

まえがき

去年の記事を読んでくださった方はご無沙汰しております。 そうでない方は初めまして、3系B4のSessと申します。研究は同種写像暗号関連のことをやっております、そのあたりは3日目のkondyさんの記事に詳しいのでそちらをご覧ください。私は技術系の記事を書けるようなPCつよつよ勢ではない為、去年に引き続き今年触れた百合作品の紹介記事を書かせていただきます。

まず初めに、この記事で扱う『百合』の定義についてです。数学でも百合でも定義は大事だとされています。
私の中での百合作品の定義は

  1. 女性同士の関係が描かれており
  2. その間に大きな感情が存在し
  3. なおかつそこにフォーカスした場合でも作品の風味が損なわれないもの

としています。感情の種類は恋愛感情でも殺意でも大きければOKです。よって、本記事では狭義の百合である女性同士の恋愛を題材とした作品以外も取り扱います。また、致命的なネタバレは避けて書くつもりですが、多少はあらすじよりも踏み込むので気にされる方はご注意ください。
p.s. 記事内のリンクは筆者にお金が入るものではないので安心して踏んでください

リコリス・リコイル

最初に紹介するのは今年の夏に放送されたオリジナルアニメ、当時の界隈の話題を総なめにした百合バディアクション「リコリス・リコイル」です。
この作品を語らずして今年の百合シーンを振り返ることはできないといっても過言ではないでしょう。

平和な日本を保つため暗躍する暗殺集団『リコリス』。その一員である井ノ上たきなはある事件の始末を巡って支部の喫茶リコリコへと左遷されてしまい、そこで実力トップのファーストリコリスである錦木千束と出会います。千束に振り回されながらも本部への復帰を目指し手柄を立てようとするたきなですが、やがて二人は大きな事件へと巻き込まれていきます。
この作品はストーリーの完成度が非常に高く、緻密に計算された脚本には脱帽の出来でした。百合としては命令第一で融通の利かない性格のたきなが明るく奔放な千束との交流を重ねるうちに、少しずつ考えが変わり心を開いていく様がまさに王道ガールズストーリーといった感じです!2人の関係が急接近する3話をはじめとして、一時的に同居生活を送ることになる6話、そして紆余曲折あって失踪した千束を南の島まで迎えに行くラストと素晴らしいイベントが盛りだくさんです。もちろん、我々の業界ではマストとされている水族館デートも完備しており安心の出来となっております。すべてにおいて完成度の高い今年一押しの作品です。

マイ・ブロークン・マリコ

リコリコが大団円を迎える頃に劇場公開された映画、女2人でハワイへ行けなかった百合。それが、「マイ・ブロークン・マリコ」です。原作全1巻(著:平庫ワカ)

ブラック企業に勤めるシイノトモヨにある日突然舞い込んだのは、親友(ダチ)であるイカガワマリコがマンションから転落死したという知らせでした。過去にマリコを虐待していた父親から彼女の遺骨を強奪したシイノはハワイ...の代わりに「まりがおか岬」を目指し最後の二人旅として旅立ちます。
本作はシイノがマリコの遺骨と旅をするロードムービーです、随所にちりばめられたダークユーモアがアイロニカルな笑いを誘う一作でした。シイノから自分を残して勝手に逝ったマリコへの怒り、悲しみ、疑問、後悔などが複雑に絡まった一方通行の感情と、回想の中での親に恵まれなかったマリコがシイノへ徐々に依存していく過程がなかなかにヘビーな百合となっております。映画版はまだ配信が始まっていませんが、百合抜きにしても大変面白い映画だったためぜひ観ていただきたいです。

深海47m

この映画、「深海47m」は2016年に公開されたものです。今年に入って好事家の友人の勧めで観たものが意外にも良くできた百合映画だったため紹介させていただきます。オタクは誰もが認める圧倒的な名作に出会ったときよりも低予算サメ映画という果てしない荒野にひっそりと咲く一輪の百合を見つけたときのほうがテンションが上がる生き物なのです、ご容赦ください。

メキシコでの休暇中にシャークケージダイビングに参加することになったリサとケイトの姉妹。なんだかんだで楽しんでいた二人でしたが突然ケージを支えていた鎖が切れ、深海47mへと落ちていきます。海上との無線も通じず、ケージの密室の中でパニックになる2人にホオジロザメの影が近づいてきて...
シャークケージダイビングとは人間が檻に入った状態で海中に降りて危険なサメを間近で観察するアクティビティらしいです。低予算ながらも観客を飽きさせないようにあの手この手を尽くしていてこの手の映画にしてはかなり上質な出来でした(個人の感想です)。百合としてはラストのどんでん返し、そこで描かれるリサからケイトへの感情、これに尽きます。ここが一番の見どころであり私が紹介しようと思い立つに至った部分です。人を選ぶ映画であり、レビューで指摘されている通り中盤のだれ具合は擁護できませんが、それを乗り越えた後のラストシーンは必見です。必ずスタッフロールはスキップせずに観てください。

花は咲く、修羅の如く

続いて紹介するのは現在ウルトラジャンプで連載中の「花は咲く、修羅の如く」です。既刊3巻(漫画:むっしゅ / 原作:武田綾乃

私は好きなことに競技性を求めるのが苦手です。ゲームは好きですがランクマッチをやろうとすると辟易してしまいます。そんな私にこの作品は深く刺さりました。主人公の花奈は朗読が好きで、好きなことを追いかけようとします。そんな彼女とぶつかるのはあくまで勝つためにアナウンスに打ち込む杏。彼女に認められようと花奈が練習に打ち込む姿はまさに青春百合という感じです。また、冒頭の部長の水樹とのガールミーツガールとむっしゅ先生による『春と修羅』の朗読の表現は圧倒されました。

私の推しは悪役令嬢。

続いては先日アニメ化が発表された「私の推しは悪役令嬢。」です。ここではコミック百合姫で連載中のコミカライズ版を紹介します。既刊5巻(漫画:青乃下 / 原作:いのり。 / キャラクターデザイン原案:花ヶ田)

初期は飄々とクレア様をいじっていたレイが徐々に感情を表に出すように過程がとてもよいです。女の子同士が交流する中で感情と考え方が変化するのはやはり百合の王道です。もちろん終始ツンデレしているクレア様も大変かわいいです。

きみと世界の終りを訪ねて

次は百合SFの名手、こるせ先生の連作短編集「きみと世界の終りを訪ねて」を紹介します。全1巻(著:こるせ)

文明が一度滅びた後の世界を舞台にした、いわゆるポストアポカリプスの作品です。私は特にアンドロイドによる姉妹百合の「灯火の機械たち」が好みでした。全編を通して繊細なタッチで描かれる心に訴えかけてくるような物語たちは是非読んでいただきたいです。

ペルソナ5 ザ・ロイヤル

次は今年の10月にSteam版が配信された「ペルソナ5 ザ・ロイヤル」です。いわずと知れた名作のためプレイ済みの方も多いのではないでしょうか。 store.steampowered.com 人と人との絆を力に変えるのがテーマであるシリーズであるためそこに百合を見いだせることは必然といえましょう。今作では杏とその親友の志保の互いの身を案ずる関係や真と姉の冴の姉妹の関係はとてもいい百合でした。とても面白いゲームで百合も楽しめて大満足でした。

ひまわりさん

ここからは今年完結した作品です。初めに紹介するのは、高校の前に佇む古い小さな書店の店長ひまわりさんと彼女に好意を寄せる高校生の風祭まつりやその周りの人々との交流を描いたハートフルストーリー、「ひまわりさん」です。全13巻(著:菅野マナミ)

初めの頃はあまり人と関わろうとせず、表情も硬かったひまわりさんが12年の連載を経て、すっかりまつりと仲良くなった様子には長期連載作品でしか味わえないエモさがあります。高校三年間を通じて少しずつ深まっていく二人の様子は見ていると優しい気持ちになれます。

ロンリーガールに逆らえない

続いては、うかつな委員長とアンニュイ系問題児のキスから始まる学園ガールズストーリー「ロンリーガールに逆らえない」です。全6巻(著:樫風)

キスから始まる百合の中でも圧倒的にピュアな作品です。最初は戸惑っていた彩花がだんだんと空に惹かれていく様子はまさに王道のガールズラブ。恋愛初心者の二人が徐々に距離を詰めていくのは見ていてキュンキュンします。

おとなりの天涯

最後に紹介するのは「おとなりの天涯」です。全2巻(著:きぃやん)

仕事ばかりのOLと不思議な少女のおねロリをきぃやん先生のいきいきとした作風で堪能できる本作。仕事で疲れた大人だけでなく卒論につかれた大学生にも活力をくれる特にB4のみなさんにはおすすめの作品です!

おわりに

ここまで読んでいただきありがとうございました。ほかにも紹介したい作品はありましたが卒論の締め切りも迫っているのでこの辺で失礼します。この記事が少しでも布教になったらとても嬉しいです。ではまた機会がありましたら、ごきげんよう